産経 書評 2014.8.9 13:00
■今の日本のふがいなさに怒り
本書タイトルの副題が、特攻隊の生みの親とされる大西瀧治郎(たきじろう)中将の遺言を元としていることに気がつく方は多いだろう。 本書は、元南西航空混成団司令であり戦闘機乗りであった佐藤守が、特攻隊について書かれた書籍をもとに特攻を命令した大西中将や実際に特攻した兵士の心情を読み解く形で書かれている。
「命をかけて戦ってくれた兵隊さんたちに感謝を」 という言葉は当たり前のように耳にする。 しかし、その命をかける行為に思いをめぐらせたとき、 「想像できない」 というのが正直な感覚なのだと思う。
著者は、自らの体験と重ねあわせ 「実際はこうだったのではないだろうか」 と特攻隊員に心を寄り添わせ、気持ちを併走させながら、その心情を解説する。 命令であれば特攻するという潔さも分かれば、エンジン故障で引き返した僚機を 「死神に見はなされた幸運な奴」 と思うことも著者は理解できる。 お国のために死ぬという行為には、私たちの想像以上に複雑な感情が絡みあう。
それは著者自身も戦闘機乗りの経験の中で、生死の境を経験し、また現実に同僚が殉職しているからこそ、語れる言葉なのだ。
読了後、軽々しく 「命をかけて」 と口にできなくなる。 では、我々のなすべき事は何なのか。 佐藤は言う、 「英霊が怒っておられるのは、今の日本の 『ふがいない体たらくさ』 だ」 と。 英霊への最大の慰霊と顕彰は、私たち日本人が日々どう生きていくかにかかっているようである。
(青林堂・本体1600円+税)
(青林堂・本体1600円+税)