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「決められない政治」の元凶・民主党こそ分党すべきだ

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 日頃主張が真っ向から対立している各新聞社の社説が、12日付は珍しく一致しました。 いずれも11日の党首討論がテーマだったのですが、民主党の海江田万里代表を厳しく批判する内容だったのです。 党首討論に期待されたのはやはり集団的自衛権行使の是非をめぐる議論だったのですが、海江田氏は明確な見解を示しませんでした。 そのために、各紙がそろって 「議論が深まらなかった」 と批判したのです。

 集団的自衛権行使に賛成の立場の 産経 は 「何が足りなかったかと言えば、海江田氏が日本の平和と安全をいかに守るかという見解を具体的に語らないことだ。 それでは、野党第一党の代表として、真に国民の生命と安全を守り抜く議論を首相とたたかわすことなど望めない」、 読売は 「海江田氏も、安全保障の法整備の必要性は認めたが、具体策は示さなかった。 民主党内では、行使容認を巡って賛否両論があり、統一見解がまとまっていない。 民主党は党内論議を先送りせず、早急に党の見解をまとめるべきだ」 と指摘しました。

 一方、集団的自衛権行使に反対の立場の朝日は 「野党第一党の党首として、安倍首相に何とか切り込みたい。 民主党の海江田代表のそんな意気込みは空振りに終わったとしかいいようがない」、 毎日は 「(憲法改正の申し出をすべきだという)海江田氏が突いたポイント自体は重要だが、民主党内で行使の是非をめぐる見解が固まっていないことから、迫力を決定的にそいだ」 としました。

 集団的自衛権の行使を認めるかどうかという安全保障、つまり国のあり方について自らの見解を示し、正面から議論することは、まさに政党の使命と言えます。 野党第一党であるにもかかわらず、いまだに党の見解をまとめられず、その使命を放棄している民主党の現状は、賛成派にとっても反対派にとっても許せないというわけです。 これは新聞各紙だけでなく、国民も同じ思いでしょう。

 はっきり言いましょう。 こんな何も決められない政党はもういりません。 民主党内では 「海江田降ろし」 や「 代表選の前倒し」 などの声が上がっていますが、私は代表を代えてもこの状況は全く変わらないと思います。 同党は集団的自衛権行使の問題がそうであるように、他の重要課題についてもほとんど明確な方針を打ち出せずにいます。

 それはそうです。 党所属議員の理念、政治的スタンスが全く違うのですから。 たとえば前原誠司元代表と辻元清美衆院議員が、国の重要問題で一致できると、誰が思いますか。 主張が完全に異なる保守系とリベラル系が混在している限り、民主党がまともな政党になるはずはありません。

 これはもはや誰の目にも明らかです。 だから同党の支持率は平成24年12月の野党転落後、低迷したままで、多くの人は同党にもはや何も期待せず、関心がないか、人によっては嫌悪感さえ覚えています。 このコラムで取り上げて書く意味さえないと思われるかもしれませんが、実は同党が今後、どうなるかは日本の政治を大きく左右すると、私は見ているのです。

 では民主党はどうすべきなのか。 私は以前にこのコラムで提案したことですが、改めて同党に 「解党・分党」 を求めたいと思います。 代表選などやっても意味がありません。 どうせ保守系とリベラル系が暗闘を繰り広げたあげく、 「新しい代表のもとで結束していこう」 などというきれい事で、党が抱える問題の本質を覆い隠すのが関の山ですから。

 野党側では昨年12月にみんなの党が分裂し、日本維新の会も7月に分党することになりました。 みんなの党の分裂は当時の渡辺喜美代表と江田憲司幹事長の対立が主原因でしたが、結果的に分裂してよかったと思います。 そして、維新の会の分党については橋下徹、石原慎太郎両共同代表の路線が異なっていたのですから、私は 「潔い決断だ」 と評価します。

 ちなみに私は野党のあり方について、政治に緊張感をもたらし、本質的な政策論議を進めるうえでも、政権に対抗しうる野党があるべきだと考えています。 みんなの党の分裂や維新の会の分党は一見、それに逆行しているように見えるかもしれませんが、そうではありません。 いったん、分かれてそれぞれの理念と政策を整理し直して、それから一致点を見いだした方が再編は進むと思うからです。

 民主党の 「解党・分党」 はまさに野党再編の最大の起爆剤となるに違いありません。 前原氏ら同党の野党再編論者は 「民主党が中心になって野党を再編する」 と言っていますが、今のような理念も基本政策もない民主党では、他の野党も連携のしようがありません。

 もし、民主党が保守系とリベラル系に分党したら、保守系はみんなの党や結いの党、分党した維新の会と、一方、リベラル系は社民党や生活の党とそれぞれ再編に向けた協議ができるようになるでしょう。
 
 野党の状況がこのままだと、日本の政治はおそらく自民、公明の与党のひとり舞台になります。 現在の安倍政権は直面する課題について 「決める政治」 を進めていますからいいのですが、それでも公明党によるブレーキや自民党の古い体質などによって、政策の内容が中途半端になったり、進めるスピードが遅くなったりという面も見受けられます。

 そこに外交・安全保障など国の根幹については、自民党と基本的に立場を同じくする一定の勢力をもった保守系の野党ができれば、日本の政治は本当の意味で 「決める政治」 に大きく転換すると思います。 経済政策や社会福祉政策、行政改革などの議論も本質的な議論が一気に進むはずです。

 そして保守系野党を再編成する最大の意義は、憲法改正です。 忘れてならないのは第1回目の憲法改正は96条の改正案の発議要件によって 「衆参各院の3分の2以上の賛成」 が必要だということです。 この要件を自民、公明両党だけでクリアすることは政治状況からいって今後もまず不可能ですし、公明党が自民党の改正案に賛成するとは限りません。

 私が見るところ、憲法改正が必要だと考える議員が与野党を超えて一致すれば、 「衆参各院の3分の2」 という発議要件をクリアできると思います。 つまり、憲法改正が実現するかどうかは、自民党ではなく野党再編にかかっているのです。
 
 憲法改正案を発議して 「憲法を国民の手に取り戻す」 のか、これまでのように 「現状に合わなくなった憲法に国民を縛りつけておく」 のか。これは現在の国会議員に課せられた最大の歴史的使命です。 私はその観点からも野党再編は絶対に必要だと思います。

 繰り返しますが、そのための野党再編は 「民主党の解党・分党」 あるいは 「分裂」 からしか始まりません。 民主党議員には恐らく、自分が当選するには最大の支持団体の連合という労組票を手放したくないとか、野党第一党という立場を維持していたいといった 「私利私欲」 があり、だからこそ 「解党・分党」 という意見や 「分裂」 の動きが出てこないのだと思います。

 しかし、そんな民主党議員の 「私利私欲」 は国民がとっくに見抜いています。 いくらきれい事で覆い隠そうとしても通用しません。 代表選などと言っていないで、潔く 「解党・分党」 に踏み切ったらどうですか。 私はそれに伴って連合も民間系と官公労系に割れざるをえなくなると思います。 連合も民主党と同じ状況で、その方が政治上も労働運動上もいいのではないでしょうか。

 冒頭の各新聞社の社説で明らかなように、民主党議員は保守、革新双方からすでに見放されていることを自覚すべきです。 そして同党の保守系議員は日本の政治の大転換という歴史的使命を背負っているという意識を持ってほしいと思います。 そうすればおのずと結論は出ます。 「解党・分党」 しかありません。それを決めたら、保守も革新も含めて多くの国民が大きな拍手を送ることでしょう。

               産経新聞  [高橋昌之のとっておき] 6月15日

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