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再生産される偏向報道

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 分かってはいても 「それにしても、この新聞は」 と嘆きたくなるのが、憲法問題を巡る朝日新聞の書きぶりである。

 最近も、朝日新聞の憲法に関する世論調査が発表されたが(四月七日・朝刊)、 憲法改正への賛否は、賛成四四%に対して反対五〇%と前年 (賛成四七%、反対三七%) とは賛否が逆転し、九条改正反対も六四%と昨年より八%増加したという。 また、集団的自衛権の憲法解釈については、 「行使できない立場を維持する」 が昨年の五六%から六三%に増え、 「行使できるようにする」 の二九%を大きく上回ったのだという。 この結果を受けて、結果分析の記事には 「憲法・非戦 広がる賛意」 などと、朝日の主張が裏付けられて小躍りしているかのような大見出しが踊っていた。

 朝日新聞の調査というだけで、おかしいと言うつもりはない。 しかし、調査結果を子細に読んでみると、 「やはり」 というのが率直な感想である。

 例えば、九条に関する設問は、九条の条文を掲げて 「変える方がよいと思いますか。 変えない方がよいと思いますか」 と質問している。 しかし、九条改正問題は、条文の表面的な可否にあるのではなく、九条二項によって自衛権が縛られているため様々な問題が生じているからではないのか。 そんな現実は無視して条文だけを見せ、 「さあ、変えるか変えないか」 と質問するのは、一種の誘導尋問で、朝日の意図が透けて見える。

 改憲の賛否についてはもっと巧妙だ。九条への賛否や非核三原則、武器輸出、 「国防軍」 に関する賛否などの質問を延々と続け、質問する側の意図を充分に感じさせた上で、ようやく二十八問目になって改憲の賛否がイエスかノーかの二択で問われる。 これでは人間心理から考えて反対が多くなると想像するのは記者だけではあるまい。

 設問の問題だけではない。 実は、この調査は日中韓三国の世論調査として行われている。 朝日新聞は集団的自衛権の解釈見直しの可否などを中国や韓国の国民にも質問しているのだ。 答えは言うまでもなく 中国で九五%、 韓国で八五% が反対。 そんな答えの分かった質問するぐらいなら、中国や韓国では 「自国は集団的自衛権を行使する権利をもっていながら、なぜ日本が同等の権利を持つことに反対するのか」 というくらいの質問をした方がずっと意味があると言える。 そもそも、言論の自由が保障されていない中国での調査に客観性があると考える方が不思議である。

 とは言え、興味深い調査結果もある。 「自衛隊が海外で活動してよいと思うこと」 についての質問では、 「危険な目にあっている日本人を移送する」 が八五%、 「国連の平和活動に参加する」 が七七% あったというのである。 当然の期待とも言えるが、実は、この二つとも自衛隊がそのまま実施すれば憲法違反となる。

 現状では、海外での日本人の移送で妨害があっても自衛隊は武力でそれを排除できない。 自衛隊は他のPKO部隊に守ってもらうが他のPKO部隊は守れないという何とも恥ずかしい事態になっている。 現にイラクでは豪軍車両が陸自拠点の入口で暴徒に攻撃されても陸自は拠点に引きこもるしかなかった(産経新聞三月十八日)。 邦人移送に対する妨害を排除することも、他のPKO部隊への駆けつけ警護も、武力行使に当たるとされ、憲法で禁じられているからである。 むろん、朝日新聞の質問には、そんな注釈は付いていないし、自衛隊への期待 と 九条改正反対六四% という世論の矛盾についての分析もない。

 こう見てくると、自らの主張を裏付けるような結果が出るように質問を構成し、都合の悪い答えが出そうな質問はしないという、巧妙に仕組まれた世論調査と言える。 普段はおかしな記事を流し、その結果は世論調査と称してフィードバックされ、さらにその世論調査の結果を根拠にして 「国民は九条改正に反対だ」 などと論説を書く。 偏向報道はこんな風にして再生産されていくのであろう。 朝日はダメだと言っているだけではなく、これにどう穴をあけるのかが問われている。
                     (日本政策研究センター所長 岡田邦宏)


                      〈『明日への選択』平成26年5月号〉
                     http://www.seisaku-center.net

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