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衣食足りて礼節知らぬ国々

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 2014.4.16 03:30 [産経抄]


 衣食足りて礼節を知る、という。 中国古代の書 『管子』 にある言葉で 「礼節」 を 「栄辱」 という場合もある。 生活に困らなくなって人は初めて礼儀や道理をわきまえる、といった意味だ。 日本では戦後の経済復興のさい、戒めとしてよく使われた。

 ▼だが現代の中国やロシアに、この箴言(しんげん)は無縁のようだ。 経済成長の勢いで周辺国の領土・領海に触手を伸ばす中国については、もう説明もいらない。 一方、ソ連時代への回帰を目指しているようなロシアも、衣食足りて一段と礼節を忘れていっているかに見える。

 ▼驚いたのはロシア下院議員が旧ソ連の解体は違法だと 「捜査」 を求めているというニュースだ。 ソ連消滅は1991年12月だったが、その8カ月前の国民投票で約8割が連邦維持に賛成していた。 それなのに指導者たちが強引に押し切った、というのが彼らの主張らしい。

 ▼だが考えてみてもいい。 当時のソ連、とりわけロシアは深刻な経済危機を抱え食糧難にあった。 このため前年に共産党独裁を放棄するとともに、「身軽」になって再建しようとしたのがソ連解体だった。 むろん連邦を構成する多くの国も独立を望んだのだった。

 ▼その後ロシアは石油価格高騰もあって経済復興を果たした。 本来ならここで国際社会の構成員として、節度ある他国への態度をとってもいいはずだ。 だが現実は逆である。 ソ連時代の横暴さに戻り、ウクライナの混乱に乗じてクリミアを併合してしまった。

 ▼「ソ連解体違法論」 は、旧ソ連ウクライナの独立に難癖をつけ、クリミア併合を正当化する狙いのようだ。 プーチン政権そのものが今、ソ連時代を美化する史観の流布に躍起だという。 ソ連の呪縛から逃れた国にとって悪夢がよみがえる思いだろう。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140416/erp14041603300001-n1.htm
       

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