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字のクセ ― 潜在意識

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 その人の書いた字をみると、その人の性格がわかる、と昔からいわれています。 ですから筆跡判断などもできるわけです。 筆と墨で、『一』 の字を書かして、その人の運命判断をする人がある、ということも聞いています。 それはたしかにあたるでしょう。

 なぜ字にクセがあるのでしょうか。 それは、その人の潜在意識のなかに積み重ねられた習慣が出るからです。 私は自分の字のクセに不満を感じまして、二回ばかり自分の字の書き方を根本的に変えるように努力したことがあります。 

 大学時代にノートをとった時に、早く書いて、わかりやすい、ということを常に心がけて書いていましたために、字に妙なクセがつきましたので、それを努力して変えました。 その時には字を書くのがとても遅くなりました。 なぜかといいますと、一字一字、考えて書くからです。 このような字を書こうという意志に従って、一字一字、とても注意して現在意識を働かして書くのです。 字を書くのに、いちいち考えながら習字の練習のような書き方をするのですから、おそくなるのは当り前です。 

 私は自分の書く字のクセを変えようという努力をしてみて、潜在意識というものが、どんなに強力な力をもっているのかを改めてしみじみ知りました。

 それまで何も考えずにどんどん書いていた時には、この字を書こうと思うだけで、どんな形に書こうと考えずに、無意識に書いていました。 つまり潜在意識でかいていたわけです。 自分の長い間の習慣に従って、自分なりのクセに従って書いていたのです。

 ところが、その字の形を変えようとしますと、一字一字、有意識で、考え考え書かねばなりません。 新しい形の字を書こうと努力しても、いつの間にか前のクセが出て、それを変えるのに私はとても苦労しました。 私は自分の字のクセを変えようと努力してみて、人間が心を入れかえて新しい生活に入るということは、なみなみならぬ努力がいるものだということもわかりました。

 字のクセを変えるだけでも、こんなに努力がいるものなら、生活全体のクセを変えるためには、自分を絶えず精進する必要のあることを感じました。 字のクセを変えるのでも、私のようにその日からムリヤリに変えようとしますと、ひどく努力が必要なのですが、習字といって、手本を習って、手本どおりに書く練習を長く続けますと、ひどい努力をして苦しまなくても、いつの間にか字が変ってきます。

 それは手本をみて、自分のクセを捨てて、スナオに手本のとおりに書く練習をすることによって、古いクセを捨てようという努力でなく、新しい字の形を繰返し書くことによって、潜在意識のなかに入れてしまうことなのです。

 この習字によって自分のクセのある字を変え、新しい自分の希望する字にする方法を、人間の日常生活に応用しますと、生活を楽にいつの間にか変えることができます。 今までの古いクセを気にせず、新しいよい習慣を繰返し繰返し練習すればよいのです。 古い悪いクセを気にして、それを直そうとするのではなく、新しい良い習慣を一つでも多くつけようという努力をすることです。

 毎日、無意識に書いていて、私の字はこんなクセの字だと思っている人でも、習字によって新しいクセを潜在意識に入れれば、その人の書く字が変るのです。 繰返し新しい習慣をつけて、潜在意識を変えれば、性格でも運命でも変ります。 小さいことでも、繰返しと、積み重ねで、潜在意識をかえ、自分をより良い方向にむけましょう。 自分の性格や運命は自分のことですから、自分で努力して良い方向にむけることです。


                  徳 久 克 己 医学博士 『精神科学』 より

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