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東京都知事選・無責任なデマゴギーに流されるな

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 都知事選がたけなわである。 話題の中心は「脱原発」を主張する細川・小泉の元首相連合だが、ここは何としても、興味本位の報道やデマゴギーに流されることのない慎重な判断を望みたい。

 筆者がまずいいたいのはマスコミに対してである。 細川・小泉連合が結成されるや、朝日は 「首都で原発を問う意義」、毎日は 「原発も大きな争点だ」 と、突然 「脱原発」 が都知事選の重大争点だと叫び出した。 しかし、それまでは東京一極集中、防災、高齢化への対応等が都政の最大の問題だとしていたのである。 全くのご都合主義という他ないが、要はこの細川・小泉連合で、安倍政権に一泡吹かせることができるかも知れない、これでまた新たな反自民の流れをつくれるかも知れない、とそれまでの主張はどこへやら、走り出したということなのだろう。

 一方、小泉氏のデマゴギーには怒りさえ感じる。 「原発ゼロでも発展できる」 と氏はいうが、そこには確たる論拠が一つも示されていない。 ただ 「政治が方針を示せば、必ず知恵のある人がいい案を作ってくれる」 と断ずるだけなのだ。 この人には自分の信ずる世界しか見えていないし、また見る気もないということなのだろう。

 原発が全て停止していることにより、天然ガスなどの年間の輸入費用が震災前より三・六兆円も増えていることについては、今は一般的な認識になり始めている。 これは大切な国富の流出を意味し、また貿易赤字常態化の原因ともなっているが、これは赤ちゃんも含めた国民一人ひとりが毎年約三万円の追加支出を余儀なくされているという話でもある。 ちなみに既に電気料金は上がっているが、これはあくまでも原発再稼働を前提としたものであり、それができないとなれば、再度の値上げは不可避ということでもある。

 一方、今こそ再生可能エネルギーの開発で脱原発はできる、 とこのご両人は述べるが、果たして現状をご存じなのだろうか。 日本では一昨年夏より再生可能エネルギーの 「固定価格買い取り制度」 がスタートしているが、このうち太陽光発電に買い取り価格 「一銑瓢燭42円」 という国際的にも極めて高い価格が初年度設定された結果、まずは権利だけでもと投機目的も含めた申請が殺到。 ここで認定を受けた事業者のプロジェクトが今後全て稼働していった場合には、この買い取りに要する補助金総額(そのために余分に要する費用)が二十年間で十四兆円近い総額になるとされるのである。

 周知のように、スペインやドイツではこの買い取り制度は、今は失敗だったとの評価になっている。 買い取り価格を普及促進のため高値に設定した結果(日本よりは安い)、その価格分の電気料金を利用者に転嫁せざるを得なくなり、もはやこの制度は成り行かなくなっているのだ。

 むろん、日本でも立法当時、この価格の高さが当然問題となった。 しかし、当時の菅首相の辞任問題も絡めたごり押しにより、議論はうやむやのまま導入に至ってしまったのである。 政治が方向性を間違え、それに国会の無責任も加わった結果、こんな取り返しのつかない現実が生まれたのだ。

 使用済み核燃料に関わる 「トイレなきマンション」 という議論にもいいたい。 小泉氏はこの話を好んで持ち出すが、実は地層処分は技術的にはすでにめどがついているという専門家もいる。 氏はフィンランドのような巨大な施設は日本では不可能だというが、日本が目指すのはそうした直接処分ではなく、再処理後に減容した高レベル廃棄物を処分する別方式なのである。 なのに何で処分方法がないと、かくまで断定できるのか。

政治は骨董やオペラのような趣味とは違う。 もっと緻密な責任ある議論が必要ではないか。
        (日本政策研究センター代表 伊藤哲夫)http://www.seisaku-center.net

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