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本当に重大な局面迎える拉致問題  早急に変更すべき外務省主導の交渉 

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『週刊ダイヤモンド』 2015年9月26日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1101 


 9月13日、東京・日比谷公会堂で拉致被害者奪還のための 「国民大集会」 が開かれた。 安倍晋三首相、山谷えり子拉致問題担当大臣、萩生田光一首相特別補佐に加えて、社民党、共産党などを除く各党代表が揃って出席した。 拉致解決に力を結集して臨む意気込みが込められていた。

 現実は、しかし、非常に厳しい。 次世代の党党首、中山恭子氏は昨年6月の 「国民大集会」 でも指摘した外務省による対応の根本的問題を語った。

 「昨年5月29日、日朝両政府がストックホルムで合意した取り決めでは拉致被害者は1人も取り返せません。 北朝鮮は、遺骨、日本人妻、行方不明者、拉致被害者の4つを同時進行で調査すると言っただけです。 拉致問題の優先も、被害者の帰国も言っていません」

 ストックホルム合意に従って、北朝鮮が4つの事柄を調べるための特別調査委員会を立ち上げただけで日本側は制裁の一部を解除した。 なんの成果も得ることなしに日本側が先に譲るのがストックホルム合意だ。 中山氏が批判するのはもっともだ。

 「日朝交渉における北朝鮮代表団の唯一の任務は拉致問題に触れることなく、日本から取れるものを取ることに尽きます。 日本側がどれ程強く拉致解決を要求しても、それを受け入れる権限など与えられていません。 交渉相手としての資格を欠く彼らに望みをつなぎ続けるのが外務省です。 外務省が主導する現交渉を打ち切り、国交正常化は後回しとし、拉致問題に的を絞った体制が必要です」

 痛烈な外務省批判である。

 現在、行き詰まっている日朝交渉に関してはさまざまな情報が飛び交う。 ある内閣参与がBSフジの「プライムニュース」で、北朝鮮は拉致被害者の調査報告書を完成済みだ。 その内容は多くの被害者はすでに死亡という厳しいもので、日本政府は受け取りを拒否している。 来年の参議院議員選挙で自民党不利に作用するから受け取らないのだという趣旨の話をした。

 救う会代表の西岡力氏が批判した。

「北朝鮮の言い分そのものです。 彼らは日本側に拉致被害者の帰国を諦めさせ、資金や物資だけを奪いたい。 だから、全員死亡とうそをつくのです。

 われわれは横田めぐみさんや有本恵子さんらの生存情報を握っています。 死亡したと言って遺骨を送ってきても、偽物かどうか鑑定する技術があります。 万が一、彼らが拉致被害者を殺害して本物の遺骨を作るような場合、またそれをどんなに高熱で焼いたとしても、わが方には遺骨から正確に死亡年月を特定する技術があります。 彼らが殺人を犯す場合、われわれは必ず彼らを国際法廷で裁きます。 生存者に危害を及ぼすことは日本の力の前にはあり得ないのです。

 にもかかわらず、北朝鮮側は何とか 『死亡』 で押し通そうと、その趣旨で報告書を作成しているのでしょう。 こちらが受け取らないのは当然で、それを来年の参議院議員選挙のためだなどとの発言は、許容範囲を超えます」

 西岡氏が語ったことは、拉致に関する日朝のせめぎ合いが本当に厳しい局面に来ていることを示す。 金正恩体制はあらゆる意味で追い詰められ困窮している。 窮状打破のためにとんでもないことをしでかす危険性がある。 そんな事態をなんとしてでも阻止しなければならない。 拉致問題は本当に重大な局面にあるのだ。 だからこそ、安易に北朝鮮に譲歩する外務省主導の交渉体制を早急に変えなければ、拉致被害者が危ないと中山氏は警告する。

 「現行の生ぬるい交渉は、拉致被害者をなんとしてでも取り戻すという総理の強い思いを、外務官僚が共有していないからです。 早急に、総理の思いを共有し、全力で交渉する人々を拉致対策本部に入れて闘うことが大事です」

 氏の言葉に、私は全く同感である。

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