2015年9月12日 12時30分 デイリーニュースオンライン
こんにちは。中国人漫画家の孫向文です。
僕自身は、以前の記事で書いたように、安保法案賛成の立場です。 日本政府、並びに日本国民にはもっと中国政府の悪事を強く批判してほしいと願ってやみません。
現状、中共に対して強い「NO」を唱えているアメリカと密接な結びつきを増せば、日本国内ではもっと反中国共産党の気勢が高まるでしょう。 そしてそれは同時に、そうした日本の声が、中国政府から虐待されている中国国民を勇気づけることにもなります。
僕が安保反対の人々に違和感を覚えるのは、彼らが 「中国の人たちとも話せば仲良くやっていける」 と考えていることです。
ですが、彼らが見ているのは、中国政府であって、政府に虐待されているウイグルやチベットを始めとする少数民族、逮捕・拘留が相次いでいる人権弁護士、そして言論の自由を奪われている中国国民、中国の侵略を受けつつあるフィリピンではないようです。
本当に平和を願う精神があるならば、まず、こうした平和を脅かす存在 (=中共) に対して 「NO」 を唱えるべきではないでしょうか? それとも、彼らが望むのは 「自分だけの平和」 であり、世界の平和などは興味ないのでしょうか。
僕が訴えたいのは、今後、日本の平和も脅かされる可能性があり、憲法9条は決して日本を守ってくれないということです。
このように、日本の安保法案反対運動を見ていると忸怩たる思いを抱かずにはいられないのですが、最近、僕が思わずその報道を見てずっこけそうになったのが、国会前で繰り広げられているハンガー・ストライキでした。
「ハンガー・ストライキ」 (以下ハンスト) とは、抗議者が飲食を拒むことより餓死をちらつかせ、相手側に主張を伝えるというデモの方法です。 ハンストは2014年に香港で行われた反政府デモ (雨傘革命) でも実行され、当時デモ活動の中心人物だった17才の学生ジョシュア・ウォンが飲食を断ち続けた結果、自力で立てないほど衰弱しきった画像はSNSで大々的に報道されました。
ですが、日本の場合、ちょっと世界のハンストとは違うようでした。 例えば彼らの画像を見ていると健康的な笑顔を浮かべ顔色もよく、飲まず食わずという命がけの行為をしているようにはとても思えません。 SNSの画像をよく見ると、かたわらには栄養ドリンクやスポーツ飲料が置かれている場合があります。 食べてはいないけれども栄養はしっかりと摂取しているのでしょう。
さらに抗議活動をしているにもかかわらず、楽しげにプラカードを掲げたりひまつぶしに漫画を読んだりと、その光景はデモというより大学生のサークル活動や人気店に並ぶミーハー客のようにも見えます。
以前の記事では、SEALDsのラップをまじえた軽薄なデモに批判的な見解を示したのですが、日本で行われている安保反対デモは、民主主義国家だからこそ許される「ユルい」ものという印象を受けてしまいます。
国民が政治に関心を持つことはいいことですが、もう少し安保反対派には現実を見据え、真剣に考えてほしいと声を大にして言いたいです。
〔著者プロフィール〕
孫向文 漫画家
中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の31歳。 20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。 その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。 近著に 『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)