スポーツ報知 12月28日(日)11時27分配信
ビッグレースを翌日に控えた土曜日の中山競馬場。 6Rの新馬戦で、スターターの中村さんは落ち着いた足取りでスタート台に向かった。 ファンファーレが鳴り響くと、右手で旗を振った。 「歩き出して台に登ったら集中するので、緊張する状態にはなりませんね」 と、淡々と振り返った。
出走馬の正確な発走で重要な役目を担うのがスターターだ。 発走地点が見やすい位置まで台を引き上げてから、発走を知らせる旗を振り、「レリーズ」 という握力計のような機械を握って、ゲートをオープンさせる。 「今だ」 と判断してから扉が開くまでは0秒7。 「必要なのは判断力、決断力、集中力」 と言い切った。
中村さんは97年からスターターを務め、今年で18年目。 有馬記念は3年連続3度目となる。 初めての12年は合図を送った瞬間、ルーラーシップが立ち上がってしまった。 「ゲートの扉を開けることは、自分でドアをスッと開けるのと違います。 その間に起きたことはどうしようもないんですが…」 と難しさを口にした。
日本中が注目するビッグレースだが、中村さんには特別な意識はない。 「私は台をあまり上げない方ですが、中山の2500メートルは少し低いところにスタートカーがあるので、少し上げるかもしれません」 と笑ったが 「きちんと枠入りをして正しい発走を行う。普段の一般のレースと同じ気持ちで挑みます」 と、力を込めた。
大学時代、夏に青森県の盛田牧場でアルバイト。 大好きな馬に携わる仕事に就いて37年。 来年3月に定年を迎える。 「最後? それは分からないですね。 来年からはお客さんとして行くかもしれません。 これからも自分の判断に自信を持っていたいですね」。 大歓声を受けながら堂々と旗を振る。 第59回有馬記念、いざ発走―。(石野 静香)