産経新聞[主張]12月21日
来年の戦後70年に向けて、歴史問題をめぐる不当な反日宣伝の強化に対する警戒が必要だ。
南京事件から77年を迎えた13日には、中国江蘇省の 「南京大虐殺記念館」 で初の国家主催の追悼式典が開かれ、習近平国家主席は 「30万人の同胞が痛ましく殺戮(さつりく)された」 と根拠のない数字をあげて日本を非難した。
言うまでもなく、「30万人虐殺」 は中国側の一方的な宣伝で、現実にはあり得ないことが日本側の調査や研究で判明している。
不当な反日宣伝に対して黙っていては、誤った 「歴史」 が国際社会で定着しかねない。 事実をもって反論を重ねる必要がある。
南京事件は昭和12(1937)年、旧日本軍が多くの中国軍捕虜や市民を殺害したとされる事件だ。 昨年まで南京市が中心となり式典が行われてきたが、中国は今年、12月13日を 「国家哀悼日」 と定め、習氏も出席した。
習氏は 「侵略戦争を美化する一切の言論は平和と正義に危害を与える」 と日本を牽制(けんせい)した。同時に 「戦争責任は人民にはなく、両国民は友好を続けるべきだ」 と述べたというが、直ちに中国側の譲歩を示すものとは受け取れない。
中国は、日本が降伏文書に調印した日の翌日の9月3日を 「抗日戦争勝利記念日」 とし、やはり習氏らが式典に出席した。
南京事件をめぐっては、南京市の学校で新たな 「読本」 を使った特別授業が行われ、中国メディアが 「34万人」 などと荒唐無稽な犠牲者数をあげている。 反日教育や対日宣伝戦は、むしろ強まっていると認識すべきだ。
慰安婦問題などをめぐり、米国内で韓国系が強めている対日宣伝への対応も欠かせない。
日本の公安調査庁がまとめた平成27年版 「内外情勢の回顧と展望」 は中国が来年、日本批判の国際世論戦を強化すると分析し、中国側が旧日本軍の公文書の研究を進め、自国に都合の良い部分のみ利用することに懸念を示した。
反日宣伝への反論は、さらに反発を招くと腰が引けていた日本政府も、対外発信の強化に転じはじめてはいる。
アニメなど文化面を中心とした 「クールジャパン」 の推進に比べ、こうした誤解を正す作業は手間がかかる。 だが、日本の信用と名誉、国益を守るため、客観的事実の地道な発信が欠かせない。