産経新聞 12月6日
朝日新聞が、一方的な歴史観に基づき作成したとされる教材 「知る沖縄戦」 を希望する中学や高校などに無料配布していた問題で、大阪府松原市の市立小学校が10月、授業で活用した後に記述内容を 「不適切」 と判断、回収していたことが6日、分かった。 この教材の回収が判明したのは初めて。 市教委は強姦(ごうかん)の記述を問題視し、「児童の発達段階を超えた部分があった」 としており、子供たちにとって適切な内容かどうか改めて議論を呼びそうだ。
教材は新聞スタイルの学習資料で、昭和20年の沖縄戦について、県内の戦争体験者らへのインタビューを交えて解説。 日本軍が沖縄住民を虐待する場面が繰り返し登場する。 朝日新聞は主に中学生以上を対象としてホームページ上などで8月末まで申し込みを募り、全国の学校などに計約38万部を無料で配布した。
松原市教委などによると、今回の小学校は6月、ファクスで6年の2学級分、80部を注文して取り寄せ、10月下旬に45分間の総合学習の授業で活用。 約2週間後に控えた広島への修学旅行に向けた平和学習の一環だった。
1学級の授業では、担任教諭が戦争体験者の証言や沖縄戦をQ&A形式で解説したページを読み上げた。 教諭が教材を補足で説明したり、児童が質問や意見を述べたりすることはなかったが、授業後に児童の一人が 「日本の兵隊が沖縄の人を多く殺したとか、日本の悪いことばかりが書かれるのはなぜなのか」 と保護者に相談。 保護者は 「殺人や性的暴行など悲惨な話ばかりで子供が疑問を持った。 一方的な歴史観に基づく教材で、授業で使うのはおかしい」 と学校側に抗議したという。
市教委は教材の中で 「アメリカの捕虜になると男は股裂きに、女は強姦されると信じていたため、誰も応じなかった」 との記述を問題視。 学校側の判断で教材を児童から回収し、校長や担任教諭らが保護者に 「授業での活用は不適切だった」 と謝罪した。
市教委は産経新聞の取材に 「強姦の文言は小学6年生が正しく理解できる言葉ではない。 多感な児童向けのものとしては発達段階を超えたものだった」 としている。
教材をめぐっては10月、衆院文部科学委員会で義家弘介前議員(自民党)が 「一面的な思想に基づく内容で(教育現場で使うには)非常に問題がある」 と指摘。 田沼隆志前議員(次世代の党)も適切な副教材を選択、使用するよう文科省に求めたのに対し、下村博文文科相が 「一面的な記述ならば副教材として不適切だ」 との見解を示した。
歴史問題に詳しい拓殖大の藤岡信勝客員教授(教育学)は 「新聞を活用した教材を無料配布すること自体はあっていい」 としながらも、「教科書などは国の検定を経て教育現場に届けられるが、今回の教材はそうではない。 厳しい指摘の目をかいくぐる形で、偏向した教材を学校で活用させることは決して許されない」 と指摘する。
その上で 「沖縄戦では日本軍の兵士が住民を守るために命を投げ出して戦うなど、積極的に評価できるエピソードもあるのに、偏った見方に基づいた記述で悲惨な歴史だけを小学生に教えるのは間違っている。 回収は当然の措置であり、教育行政が正常に機能した証しだ」 と学校側の対応を評価した。
■「小学校側の希望に基づいて送付」
朝日新聞社広報部の話 「『知る沖縄戦』 は子供たちが戦争について知るきっかけになれば、と考えて作りました。 紙面作りにあたっては、子供たちがより身近に感じられる10代の学徒や住民、母親の戦場体験を軸に据え、子供たちと接した経験の長い戦争体験の語り部の方々にご協力をいただき、教科書なども参考にしました。 ご指摘のような内容とは考えておりません。 (小学校へ配布した理由については) 朝日新聞紙面などでお知らせし、学校や先生のご希望に基づいて送らせていただいています」