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私は朝日新聞の虚報の被害者

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Japan In-Depth

■私はアメリカの首都ワシントンで朝日新聞の虚報の被害者となった。

「日本軍による女性の強制連行はなかった」 と主張して、アメリカ側で朝日新聞の 「強制連行はあった」 という虚報を信じた人たちから激しい攻撃を浴びたからである。 しかし私は事実の主張を変えなかった。 そのためにはアメリカ側の知人や友人からも批判された。 だがいまや私の方が正しかったことが朝日新聞の大訂正により、改めて証明されたのだ。

アメリカで慰安婦問題が大きくなったのは2007年である。 この年に連邦議会下院に慰安婦問題で日本を糾弾する決議案が出され、やがて7月末に可決されたからだった。 この時期に私がアメリカ側に向かって述べていたことを紹介したい。 慰安婦問題で当時、真実を語ろうとすることがどれほど抵抗を招いたかをできるだけ多くの人に知ってもらいたいからである。 そして朝日新聞の誤報虚報の罪の大きさを理解してもらいたいからでもある。


 私は2007年5月、全米各地にネットワークを広げるPBS (公共放送網) 系のテレビ番組でインタビューを受けた。 ニュースウィークの編集長などを務め、いまもワシントン・ポストなどにコラム記事を載せるアメリカ人ジャーナリストのファリード・ザカリア氏がインタビュアーだった。 テーマは日本の慰安婦問題。日本は第一次安倍政権である。 インタビュー番組内容の日本語訳の骨子を紹介する。 朝日新聞の虚報がアメリカでどのように広く受け入れられていたかがよくわかるからである。


ザカリア  
 「安倍首相が 『第二次大戦中に日本軍が軍事売春施設に女性を強制徴用したことを示す証拠はない』 と述べ、世界中の怒りを買っています。 古森さん、安倍首相はなぜそんな言明をせねばならなかったのですか」

古森  
 「安倍氏はかねてから日本軍が政策として戦時中のアジアで若い女性たちを強制徴用したことはないと主張してきました。 インドネシアなどで日本軍の一部将兵が上層部からの命令に背く形で、地元の不運な若い女性たちを強制的に連行した個別のケースは存在しました。 しかし日本軍全体が軍当局の方針としてそんな行動をとったという証拠はなにもありません。 安倍首相はそのことを述べたのだと思います」

ザカリア  
 「しかし関わった女性の人数、そして規模はなんらかの形の組織的な努力があったことを示しています。 女性たち自身も無理やりだったとか、日本軍当局に選別されたという意味の主張をしています。 だからなにか組織的、あるいは制度的な側面が日本軍の方針にはあったと思うのですが」

古森  
 「軍隊のための売春施設の管理に関して組織的な関与、あるいは組織的な運営があったことは日本政府も、民間の関係者も認めています。 しかし売春もあくまで任意が基礎となっていました」


■いま日本国内で改めて論議を呼ぶ慰安婦問題は国際的な状況こそ重要である。 日本の国家や国民の名誉が左右されるのは日本の国外でだからだ。


ファリード・ザカリア  
 「慰安婦の売春は任意ではなかった?」

古森義久  
 「いえいえ、女性たちの行動は任意あるいは自発的だったということです。 当時、軍の慰安婦を募集する広告が新聞などに頻繁に出ていました。 募集だったわけです。 当時、悲しいことながら、売春は合法でした。 女性たちと日本軍当局の間には売春施設を経営する業者たちが存在しました。 軍は確かに関与しました。 だが軍当局が方針として女性たちを強制徴用したことはなかったのです」

ザカリア  
 「しかし自分たちが強制徴用されたと主張する女性たちは確実に存在しますね」

古森  
 「売春管理の業者たちが女性を強制徴用したケースはあったでしょう。 家族の借金返済の穴埋め、親が娘を売春に供して、かなりの額の現金をもらう。 最も悲しい形の人身売買でした。 こういう場合は女性個人の次元では確かに強制があったでしょう」

ザカリア  
 「しかし軍部が代金を払っていた。 このセックス取引の制度的性格を明確にしましょう。 将兵たちはセックスを得ても代金を払わなくてよかったのですね」

古森  
 「いえ、そうではありません」

ザカリア  
 「軍は組織として中間の業者と契約を結んでいた。 そして女性からのサービスを買い、将兵に提供していた?」

古森  
 「ただし個々の将兵は女性に代金を払っていました」

ザカリア  
 「えっ、個別にですか」

古森  
 「そうです。その支払いを示す記録は山のようにあります。女性の多くは高額の収入を得て、家族に送金することがごく普通でした。極端な場合、当時の日本の首相の給料より多い収入を得ていた女性もいたそうです」

ザカリア  
 「でも売春施設は軍の基地内とか近くにあったのだから、軍がその開設は経営に関与しなかったはずがない」

古森  
 「軍はインフラをつくりました。 そのことは日本の政府も歴代首相も過ちだと認め、謝罪をしています」

ザカリア  
 「しかしその謝罪が韓国でも中国でも本当の謝罪として受け容れられていない」

古森  
 「日本の周辺にはこの種の問題での日本の謝罪を決して受け容れないという一定の勢力が存在します。 慰安婦問題では日本の歴代首相が謝罪をしてきた。 だが外部の勢力は不十分だという。 国会の決議をせよ、という。 ハードルが常に高くなっていくのです。

ここで強調したいのは、慰安婦というのも当時の戦争の一部です。 日本が遂行した戦争行動はすべて厳重な懲罰を受けた。 日本も日本国民もその代償を死をもってまで払ったのです。

戦争犯罪人として多数が裁判にかけられ、処刑されました。 日本国は敗戦で完全に降伏し、懲罰を受け、巨額の賠償金を払いました。 その一つの総括がサンフランシスコ対日講和条約でした。

戦争の清算として日本人はこれ以上、なにができるのか。 日本国民の多くがいまこう感じていると思います」 (つづく)

   古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)


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